2012年度年次報告会

名古屋大学環境学研究科レクチャーホール(環境総合館1階)
2013年3月19日(火) 9:00-17:25
プログラム(PDF185KB), 要旨(PDF508KB)


 2013年3月19日、環境学研究科レクチャーホールにおいて、名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センター・2012年度年次報告会が開催されました。
 本報告会は3部構成にて行われ、第1部はセンター構成員の一般成果報告、第2部は本年度のハイライト研究成果報告、第3部は今年度で退職される奥田隆主席技師と転出される中道治久助教の講演が行われました。当日は学外を含め60名の参加者がありました。



中道治久 助教

奥田隆 主席技師

講演会の様子



■転出者講演

中道治久
「地震計アレイを用いた2011年霧島新燃岳噴火活動における微弱な火山性微動の検出と震源推定」


 霧島新燃岳は2011年1月26日に発生した準プリニー式噴火が発生した。我々は、噴火5日後までに新燃岳から東5 km(宮崎県小林市夷守台)に地震計アレイを設置した。なお、アレイ観測点は2012年12月14日に撤収した。準プリニー式噴火の後、爆発的噴火が2月中旬にかけて発生し、2011年の9月まで散発的に噴火があった。
 本講演では2011年2月から9月の噴火活動期間におけるマグマ供給過程を明らかにするために連続地震波形データのアレイ解析を行った結果を報告する。この連続アレイ解析によって、噴火活動期間において噴火の前後に微弱な火山性微動が発生していることが分かった。この火山性微動の振幅は100-200 nm/sと微弱であるが、数日間振動が継続する。微弱な火山性微動は2月上旬、2月下旬から3月上旬、6月下旬、8月下旬から9月上旬に発生していた。これらの期間はちょうど噴火期間に対応する。微弱な火山性微動の震源を推定するために、爆発地震と火山性微動のアレイ解析結果を比較した。爆発地震の波の到来方向は新燃岳火口を向いており、スローネスはP波とS波がそれぞれ0.3 s/km,0.4 s/kmである。一方、微弱な火山性微動の波の到来方向は新燃岳よりも北方で、スローネスは0.2-0.8 s/kmであり、微動の波にはP波とS波と表面波がミックスされていると推察される。爆発地震と火山性微動のスローネスと到来方向から確率密度関数を計算して震源位置の推定を行った。爆発地震の震源は火口直下の海抜上0.5 kmから海抜下1 kmに推定された。一方、火山性微動は新燃岳の北に1 kmの海抜上1 kmから海抜下1 kmに推定された。この震源領域は新燃岳北西にあるマグマ溜まりと新燃岳の間にあり、熱水系があると推定されている領域に近い。よって、震源と発生パターンから、火山性微動はマグマ溜まりから新燃岳にマグマが供給される時に放出される熱が熱水系に供給される際に発生していると推察される。

■定年退職記念講演

奥田 隆
「地震予知観測地域センターから地震火山研究センターへ」

 現在、環境学付属地震火山研究センターは研究・教育の両面で大きな存在となっているが、発足当時は助手(現在の助教)1・技官1、わずか2名の犬山、高山、豊橋にあった地震、地殻変動観測所と並立する組織だった。1975年10月センター設立時に技官として採用されてから2013年の今日まで様々な仕事をさせてもらった。はじめのうちは地殻変動分野の観測施設の建設、坑道に設置する観測機器の開発・製作や定常観測などを担当していた。88年頃、日本の大学に米国製の測地用GPS受信機3機種が導入され、本当に役に立つのか半信半疑ながら、それらを使いこなし他大学との合同観測を行ったり、また名古屋大単独で中部地域から伊豆諸島、さらには沖縄まで観測に出かけていった。89年には火山部門も設立され、噴火予知計画に基づく全国の火山を対象とした火山体構造探査にも第一回の霧島山から携わってきた。99年には京大から移動された安藤先生と田所さんらによって、海底地殻変動観測という全く新しい分野も開始された。このプロジェクトが名大で始められた初期から参加し、今日まで様々な成果を上げている。
 このように常に最先端の仕事に携わることが出来たことを、教員の皆さんや技術職員、他のスタッフの方々に感謝しながら、まとめを最後の年次報告と致します。


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