NGY地震学ノート No.25

Feb 27, 2010
名古屋大学地震火山・防災研究センター

◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
2月27日チリの地震(M8.8)
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● 概略・特徴: 2月27日06時34分(UT),チリ中部でM8.8の 地震が発生しました.震源に近いコンセプシオン(人口約20万人)などの都市とは 連絡が未だにつかない状況の中で,すでに100名を超える方の死亡が確認されているとのこと. 高速道路が崩落したりしているようで,被害が気になるところです.津波も発生しており ,中部タルカウアノで2.3m,バルパライソとコキンボで1.3mの津波が観測されたようです.
USGSによる速報震源は次の通りです.

    発生時刻         震央          深さ      M
 10/02/27 06:34  (UT)      35.846°S   72.719°W    35 km    8.8

●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録(P波上下動44) を用いて 解析しました.
●結果: 結果をに示します。主な震源パラメータは次の とおりです.

 走向、傾斜、すべり角 =  (18,20,105) 
 地震モーメント  Mo  =  1.75 x10**22 Nm  (Mw = 8.8)
  破壊継続時間(主破壊) T  =  100s
 深さ          H =  32 km
 最大すべり量      Dmax = 13 m

●解釈その他:ナスカプレートの沈み込みに伴うプレート境界地震です. 破壊は浅い領域に進んで行きました.そのため破壊開始点は深めですが津波が 発生したものと考えられます.
下図で は1990年以降に起こった地震活動(USGSによる)です. これをみるとちょうど今回の地震付近で地震活動が空白になっていることがわかります. 今回の地震の震源域付近では1939年,1830年代にも巨大な地震が起こって津波が発生している ようです. 今回の地震のすぐ南側は1960年のチリ地震(Mw9.5)の震源域です.このチリ地震では 日本にも2-3mの津波が23時間かけてやってきて,139名の方が亡くなりました. 今回も日本に津波が到達する可能性があり注意が必要です.

(文責:山中)

図1 すべり分布(コンターは1m間隔で4m以上すべったところ).破壊開始点は. はUSGSによる地震活動.