NGY地震学ノート 番外

Jul. 13, 2014
名古屋大学地震火山研究センター

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7月9日南木曾で発生した土石流をとらえたHinet南木曾観測点
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 7月9日,台風8号が接近する長野県南木曾で土石流が発生し,中学生が一名亡くなった.この地点は我々のセンターが維持管理する御嶽山周辺の観測点のメンテナンスにいつも通るところである.この日も数時間前にセンター技術職員が通過していたという.この現場のすぐ近くにHi-net南木曾観測点がある.この観測点は大丈夫だっただろうかとちょっと気になり防災科技研のHPで確認したところ,土石流が流れていった記録が取れていた.

★Hi-net南木曾観測点の位置関係

図1は国土交通省中部地方整備局が発表した速報資料の土石流地図にHi-net南木曾観測点(N.NGIH)を書き加えたものです.すぐ脇を氾濫した川が流れています.

★Hi-net南木曾観測点で取られた地震波形

図2に南木曾観測点の3成分波形(上からEW,NS,UD)を示します.横軸の単位は秒で6000秒が17:40です.
 17:38あたりから少しずつ振幅が大きくなり,17:40:40頃にさらに振幅が大きくなったあと,17:42:48と17:45:19に最大振幅の波がやってきています.地震と違ってどの波も立ち上がりが不明瞭で徐々に振幅が大きくなっていく紡錘型をしています.
 国土交通省中部地方整備局の報告では梨子沢の上流の2箇所で崩落が起き,それぞれ大梨子沢,小梨子沢をそれぞれ流れ砂防堰堤を越えて流れて行ったようです.南木曾観測点で得られた2つの大振幅の波はこの2箇所の崩落で砂防堰堤を越えて流れてきた土石流を示しているものと思います.
 3成分ともほぼ同じ振幅で波形が似ているのも特徴的です.

★土石流の周波数特性
約30分ほど続いた振幅の周波数特性を調べるため,6000-8000秒のデータを切り出しスペクトル解析を行った.比較のため,土石流発生より前の2000-4000秒のデータについても同様の解析を行った.各周波数の振幅比較を図3に示す.赤が2000秒からの黒が土石流が発生した6000秒からのスペクトルである.3秒より長い周波数帯について は全く変化がないことがわかります.

文責 山中