火山超雑学クイズ

ホーム >  火山超雑学クイズ >  クイズタイトル

出題クイズ

Q14
日本で一番大きいカルデラはどこでしょうか?ただし、気象庁「日本活火山総覧 第4版」に載っている大きさの記載に基づくものとします。(國友孝洋)
出題者(國友孝洋)

回答はこちらをクリック

A14
北海道にある屈斜路(くっしゃろ)カルデラです。

解説
 気象庁「日本活火山総覧 第4版」のカルデラ火山一覧には、直径10㎞以上あるいは過去十数万年以内に大規模な噴火(火山爆発指数が6以上)によって形成された、12のカルデラが記載されています。全てのカルデラについて大きさが記載されているわけではありませんが、対応する活火山の説明を読むと大きさを知ることができます。大きい順に挙げると、屈斜路カルデラ(東西26km南北20km、活火山:アトサヌプリ)、阿蘇カルデラ(東西17km南北25km、活火山:阿蘇山)、姶良カルデラ(東西23km南北17km、活火山:桜島)、鬼界カルデラ(東西23km南北16km、活火山:薩摩硫黄島)、、、です。
 鬼界カルデラは、海上保安庁 海洋情報部の論文[小野寺ほか(2009)]によると、東西22km南北19kmで、こちらを採用すると姶良カルデラを抜いて3番目ということになります。鬼界カルデラのようにほとんどが海中にあるカルデラはもとより、全体が陸上にあっても外輪山が全て残っているとは限らず、大きさを正確に求めるのは容易ではありません。また、完全な楕円形ではありませんし、方向が揃っているわけでもないので、東西南北の長さで大きさを比較できるかどうかも疑問です。屈斜路カルデラと阿蘇カルデラを実際に地図で確認しても、その大きさの差が歴然としているわけではなく、甲乙つけがたいところです。このクイズでは、独自に上位二つのカルデラの大きさを比較してみたいと思います。

参考文献
気象庁ホームページ(日本活火山総覧 第4版 Web掲載版)
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/souran/menu_jma_hp.html
気象庁ホームページ(アトサヌプリ:屈斜路カルデラ)
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/sapporo/104_Atosanupri/104_index.html
気象庁ホームページ(阿蘇山:阿蘇カルデラ)
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/506_Sakurajima/506_index.html
気象庁ホームページ(桜島:姶良カルデラ)
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/506_Sakurajima/506_index.html
気象庁ホームページ(薩摩硫黄島:鬼界カルデラ)
https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/fukuoka/508_Satsuma-Iojima/508_index.html
小野寺健英・伊藤弘志・熊川浩一・小山薫・加藤正治(2009)海域火山基礎情報図「鬼界カルデラ」調査, 海洋情報部技報, 27, 92-97.


 地理院地図の機能を用いて屈斜路カルデラと阿蘇カルデラの大きさを比較してみました。作図の際の大きさ合わせには<設定―等距圏>、面積算出には<ツール-計測-面積>を用いました。阿蘇カルデラ(図A)の輪郭については星住ほか(2004)および星住ほか(2015)を、屈斜路カルデラ(図B)の輪郭については勝井(1962)を参考にしました。阿蘇カルデラの形は長方形に近く、対角線が直径26kmの円にちょうど収まります。南北25kmという記載は間違いではないですが、実体を正確に表しているわけではないようです。一方、屈斜路カルデラは楕円形に近く、南西側で直径26kmの円から少しはみ出しています。東縁に摩周カルデラが形成されており、その中心あたりに元のカルデラ縁が通ると考えれば、東西26kmというのはよさそうです。両カルデラを重ね合わせてみると(図C)、屈斜路カルデラの方がやや大きい印象を受けるものの、カルデラ縁が不明な部分が多くあり、その差が一目瞭然というわけにはいきません。そこで、屈斜路カルデラ縁の不明な部分に対して、a-b間は直線、摩周カルデラの外輪山の西側を通ると仮定して、地理院地図で面積を計測してみました。結果は、阿蘇カルデラ約370km2、屈斜路カルデラ約390km2となり、屈斜路カルデラの方が、過小評価気味であるにもかかわらず大きいことが分かりました。なお、以上見てきたカルデラ縁の定義は、地質と地形との両方が考慮されたものでしたが、国土地理院のホームページでは地形だけを考慮したとみられる定義がされています。こちらを採用すると屈斜路カルデラは約370㎞2となり、阿蘇カルデラとほぼ同じ面積となりました。東と西のカルデラ横綱、勝ち負け付かず、両者5分で並び立つという結論もありそうです。

参考文献
地理院地図 https://maps.gsi.go.jp/
勝井義雄(1962)5万分の1地質図幅「屈斜路湖」および同説明書,北海道開発庁
星住英夫・尾崎正紀・宮崎一博・松浦浩久・利光誠一・宇都浩三・内海 茂・ 駒澤正夫・広島俊男・須藤定久(2004)20万分の1 地質図幅「熊本」, 地質調査所
星住英夫・斎藤 眞・水野清秀・宮崎一博・利光誠一・松本哲一・大野哲二・宮川歩夢(2015)20万分の1 地質図幅「大分(第二版)」, 地質調査総合センター
国土地理院ホームページ(火山の活動による地形)
http://www.gsi.go.jp/kikaku/tenkei_kazan.html