回答はこちらをクリック
「開田岩屑なだれ」は、約5万年前に御嶽山で発生した大規模な山体崩壊です。その規模は、御嶽崩れの数十倍と推定されています。木曽川沿いに犬山までのおよそ150㎞に渡って確認される御嶽山由来の泥流状堆積物は「木曽川泥流」と呼ばれていますが、これは、岩屑なだれが流下する間に、水を多く含み、土石流~泥流の状態に変化していったものと考えられます。堆積物が岩屑なだれの特徴を残している大桑村よりも上流部を「開田岩屑なだれ」、下流を「木曽川泥流」と呼ぶ提案もされています。開田岩屑なだれは、御嶽山の北東部(摩利支天山の東側あたり)で発生したと推定されていますが、その後に、継母岳、四ノ池、三ノ池などの大規模な火山活動で山体が付加されたこともあり、崩落場所の詳細は分かっていません。
開田岩屑なだれ堆積物が特に厚く堆積しているのが開田高原末川です。流れ山で凹凸がある平坦地は、居住地のみならず、蕎麦や甘いトウモロコシなどの栽培、木曽馬の里などの観光、ゴルフ場などに利用されており、木曽に多くの恵みをもたらす場となっています。開田高原末川については、御嶽のみどころ③「開田高原末川-5万年前の大規模な岩屑なだれ堆積地」もご参照ください。
吉田英嗣(2010)土砂供給源としてみた日本の第四紀火山における巨大崩壊, 地学雑誌, 119(3), 568-578.
中村ほか(1992)岐阜県八百津町の木曽川泥流堆積物から採取された埋没樹木の加速度14C年代, 第四紀研究, 31(1), 29-36.
Takarada et al., 1999, Depositional features and transportation mechanism of valley-filling Iwasegawa and Kaida debris avalanches, Japan, Bull Volcanol, 60, 508-522.